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2011-01-24 (Mon)
映画「ハーブ&ドロシー」を観ました。
http://www.herbanddorothy.com/jp/

マンハッタンのアパートに暮らすごく普通の老夫婦、ハーブとドロシーが、
30年以上にわたってこつこつと現代アート作品を買い集め、
膨大なコレクションを築いたという、本当にあったお話です。


アートを買う基準はたった2つ。
自分たちの収入で買える値段であること。
そして、小さなアパートに収まるサイズであること。

1LDKの小さなアパートは、壁も天井も、トイレやキッチンまで
アート作品でぎっしり埋め尽くされ、
ベッドの下の作品が増えていくにしたがって
ベッドがどんどん上に上がっていくというほど。

やがて、4000点にも膨れあがったコレクションを
ナショナル・ギャラリーに寄贈する決心をします。
彼らのコレクションは、すでに価値の高騰したアーティストの作品ばかりで、
売れば大富豪になれたにもかかわらず、
1点たりとも売ることはなく、
今も小さなアパートで、慎ましいながらも幸せな生活を送っています。
「公務員だった自分たちが、定年退職した今、今度は市民に還元したい」
という持論です。



彼らは、一緒に暮らしている猫や亀や魚たちと変わらない愛情を現代アートに注ぎ、
アート作品と一緒にいるだけで幸せだったんでしょうね。

それでも作品に対する審美眼たるや並外れたものがありました。
アーティストたちもふたりに信頼を寄せていて、
アーティストの方がハーブの言いなりになっていたりするところが
ちょっと笑えました。

クリストとジャンヌ=クロード夫妻が長期間家を空けることになり
飼い猫をどうしようかと困った際、
コラージュ作品をただであげる代わりに
猫の世話を半年間彼らに頼んだというエピソードからも
アーティストとの信頼関係がうかがえます。


ハーブとドロシーは
ミニマルアートやコンセプチュアルアートを中心にコレクションしているにもかかわらず、
アートを理屈で考えるのではなく、
作品を実際に見て、心に響いた作品のみを買います。
リチャード・タトルによれば、
「目から入ってきた情報を、脳を通過させずに、直接魂に送り届ける」のです。

彼らのアートへの接し方を見ていると
自然を見たり、自然と触れ合うのと同じだと思いました。
アートと接することは、資産や社会的地位に関係なく
私たちの生活をなんと豊かに潤してくれることでしょう!



ハーブとドロシーは、今日もふたり仲良く手をつないで
ギャラリー巡りをしていることでしょう。

手をつないで歩いている姿がとてもキュートで、
生き方がとてもチャーミング。
こんな人生って素晴らしい。

心温まる微笑ましい映画でした。


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